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この写真はイメージです。本文とは関係ありません。 |
2014年7月から毎月2回、小学生~高校生の障がい児が通う放課後デイサービスの施設内でパソコン教室を開催しています。
ダウン症、自閉症、発達障害、ADHD、学習障害、知的障がいなど、障がいの内容も年齢もさまざま。授業は30分間、定員4名を7クールやりますから全部で28名のお子さんが教室に参加してくれています。
うれしいことに、みんな辞めずにずっと続けてくれているので、半分以上のお子さんが4年間続いています。私は障がいについての知識がほとんどないので、資格を持つ施設のスタッフさんと一緒に教室を運営しています。
障がいの特徴によってお子さんの印象はさまざまですが、会話のキャッチボールができるのはお子さんの半数です。
あとのお子さんは、私の話をある程度理解してくれているものの、言葉で自分の気持ちや意志を伝える事ができません。
コミュニケーションを取りづらいお子さんがほとんどですが、相手の胸の内や心を瞬間的に察知する能力は全員高いので、ごまかしたり表面的に付き合ったりすることはできません。表面的な気持ちで接すると、たちまち拒絶されます。
教室を始めてから1年半くらい経った頃、3人新たに入ってきました。
小2の幼い3人です。残念ながら3人とも会話はまったく成り立ちません。
中でも男の子のTくんは落ち着きがなく5分も座っていられない状況でした。
Tくんはパソコンをおうちでやっているからというお母さんの強い要望で参加しました。
しかし、会話がまったく成り立たないだけでなく、3分もしないうちにウロウロしはじめ、ノートPCをバーンと閉じたり勝手に部屋を出ていこうとしたり、すぐに大声を出して暴れてしまいます。教えるどころではありませんでした。
スタッフさんと相談の上、2回目が終わった段階で、お母さんに残念ながら無理ですとお断りしました。
それでもお母さんは、会話はできないけど話せばちゃんとわかる子なので私が言い聞かせます、パソコンが好きなのでなんとかお願いしますと、訴えてこられたのです。
そこで、あと2回だけ様子を見ます、5分間座って参加できたら続けていただきますが、できなかったらあきらめてくださいねとお母さんに伝えました。
私もスタッフさんも、これでお母さんもあきらめがつくだろうと思っていました。
ところが、Tくんはがんばりました。
何度か注意をしながらですが、何とか5分間座って参加できるようになったのです。私たちは半信半疑でしたが、続けてもらうことにしました。
Tくんは、今では体が大きくなり、会話も半分くらいわかるようになり、現在も喜んで参加してくれています。
ペイントソフトでいろんな形の図形を使ってお手本どおりに作品を作れるようになりました。ネット検索で好きなアニメの画像を探すこともできるようになりました。
エクセルで数字や文字を入力しカレンダーを作れるようになりました。
当時の私はあきらめたのです。
Tくんは無理だと、勝手に決めつけていました。
しかしTくんの可能性は無限大でした。
Tくんと一緒に入ってきたMちゃんは、おっとりしていてニコニコしてますが、意思の疎通はできませんでした。
当時、Tくんと同じ2年生でしたが、数字は全然わかってなくて読むこともできませんでした。
私は毎回「1~」と読み上げたあとに1はここだよ~と指さしして入力させていました。
残念ながらMちゃんは理解する事も覚える事もない状態で、約2年が経過しました。
私は心の中で、Mちゃんはこのままずっとこうだろうなぁと判断していました。
しかし、ある時Mちゃんが変わったのです。
いつものように「1~」と読み上げると、私が指さす前にMちゃんが自ら1を入力したのです。
私は驚き、まぐれかな?と思い何度か確かめました。
Mちゃんは1を確実に覚えたのです。
それから数か月間は1だけでしたが、現在では数字だけでなくアルファベットも半分近く、認識できるようになりました。
理解しているというよりは、同じものをキーボードから探して入力できるという感じですが、間違いなく入力できるようになっています。
障がい児の成長は、1人1人ものすごく差があります。
1回言っただけですぐに理解し覚えてしまうIQの高いお子さんもいれば、他のお子さんの何倍もの日数をかけてゆっくり成長するお子さんもいます。
しかし、成長しないお子さんは1人もいません。
成長の1歩の幅に個人差があるだけで、全員、確実に進歩しています。
障がいのあるお子さんが向上心や意欲をもってパソコン教室に参加してくれているのか、私にはわかりません。
だけど、がんばってるねとかよくできたねと褒めると、みんな喜んでくれます。
うれしい表情をしない、言葉ではうるせ~よと反抗的なお子さんでも、辞めずに続けてくれているというのが、彼らの何よりの答えだと思っています。
私は、子どもたちから、あきらめないことの大切さを学びました。
教える側が勝手に線引きをして、できるとかできないとか決めてはいけないと、身をもって彼らに教えてもらいました。
TくんとMちゃん以外のお子さんからも、私はたくさんのことを学んでいます。
最近は特に、全員1回以上名前を呼んで声がけすること、前回の本人と比べてできるようになったことを見つけて褒めることを心がけています。